アルミの冷間鍛造がなぜ難しいのか?

冷間鍛造の素材としてSCM材をはじめとする鉄系素材や、SUS304などのステンレス材が多く使用されます。一方で、アルミは先の材質と比較して使用頻度は低く、アルミ自身の材質特性とフォーマー機の機構により加工が難しい材質であるとされています。詳しくは下記で紹介をいたします。

1.アルミの加工くずが一つの要因

アルミ材を冷間鍛造で加工を行うと、工程中に発生する加工くず(チップ)の比重が鉄・特殊鋼と比較して非常に軽く、フォーマー機内でくずが飛び散ったり、アルミとパンチの間で加工くずとして残ってしまうことがあります。この加工くずを残したまま加工をすると、金型を痛めたりと設備・工具の劣化を招く材質であるとされているからです。

2.アルミ材冷間鍛造が求められる理由

アルミ材は素材として決して安価な素材ではありません。切削加工で行うと、切子の排出が多くなり、コストアップを招いてしまいます。しかし、冷間鍛造(Cold Forging)という加工方法は、量産部品でのコストメリットを活かす為に、自動車や建設機械などの業界を中心に加工方法として採用されており、ニアネットシェイプができるため、素材の無駄を限りなく少なくし、リーズナブルなコストでの製品製造が可能です。

また、自動車や建設機械などの車両においてEV化が進み、バッテリーにより車体総重量が上がった分を部品一つひとつの軽量化を検討することでトータルでのエネルギ―効率の向上を目指す流れがあります。特に部品点数が多い車体・足回りなどにおいて、部品一つひとつを軽量化させ、重量を削減することが図られており、中空構造などの設計も一つの対応策ですが、部品自体がダウンサイジングの傾向にあることから、中空化による軽量化というのは限界を迎え、現在では材質変更という視点から軽量化が行われています。

その中で、最も効果があるといわれているのが、アルミ材を使用した軽量化提案です。
当社としても、この業界の流れにいち早くキャッチアップするためにアルミ材の冷間鍛造を技術テーマとして設定し、技術開発を行ってきました。

また、昨今アルミの冷間鍛造化に関するお問い合わせを数多くいただいています。開発案件も多いため、製品写真をご紹介できないですが、図面をいただき、ご相談いただけましたら対応をいたします。もちろん、VA・VE提案も必要に応じて行いますので、お困りの案件はお問い合わせください。

3.アルミの材質特性について(参考までに)

《アルミ材の冷間鍛造によるメリット》

・冷間鍛造用鋼材と比較して、1/3程度の比重で軽量化を実現
鍛造により、アルミ部材への強度向上を実現
・アルミ材を使用した角形状の高精度鍛造加工も実現