「試作屋で作った高精度なアルミ部品が、量産ラインに乗せた途端にコスト高になり、品質も安定しない」。 これは、設計開発から量産移行のフェーズで最も頻発するトラブルの一つです。その原因の多くは、試作加工と量産加工で「使用する工作機械」や「加工条件」が乖離していることにあります。

特に、切削性の良いアルミ(アルミニウム合金)を用い、複雑な形状を大量に生産する場合、どの設備で削るかがコストを決定づけます。 本記事では、アルミの量産試作において陥りがちな失敗パターンと、その解決策として荻野工業が提案するBrother製「SPEEDIO 200Xdシリーズ」を活用した高効率加工について解説します。

アルミ部品の「量産試作」で陥りがちな失敗パターン

新製品開発において、試作は「機能検証」の場であると同時に、「量産性の検証」の場でもあります。しかし、この「量産性」が見落とされたまま試作が行われるケースが少なくありません。

試作機(汎用機)と量産機(マシニング)のギャップ

試作専門の工場では、熟練の職人が汎用フライス盤や、剛性の高い大型マシニングセンタを使って、時間をかけて「完璧な1個」を削り出します。この段階では、切削時間(サイクルタイム)はあまり考慮されません。 しかし、いざ月産数千個の量産となると、同じ時間をかけることは許されません。自動化された量産ライン(マシニングセンタ)へ移行する際、刃物の送り速度を上げたり、工程を分割したりする必要が生じ、その結果「バリが発生する」「寸法が暴れる」といったトラブルが発生します。これが「試作と量産のギャップ」です。

複雑形状ほど「同じ機械」で検証する重要性

特に、油圧制御用のバルブボディや、センサー筐体のような「複雑形状」のアルミ部品は、加工パス(刃物の動き)が複雑で、機械の挙動が加工精度に直結します。 量産時に使用する予定の機械と全く異なる特性の機械で試作を行っても、量産時のサイクルタイムや不良率は予測できません。 「将来的に量産を行う」のであれば、試作段階から量産を見据えた設備(マシニングセンタ)を使用し、「量産と同じ条件」でデータを取ることこそが、最も確実なリスクヘッジであり、トータルコストダウンへの近道なのです。

荻野工業の強み:Brother製「SPEEDIO 200Xdシリーズ」による高効率・複雑加工

荻野工業(量産精密金属加工コストダウンセンター)では、アルミ部品の量産試作において、Brother製の30番マシニングセンタ「SPEEDIO 200Xdシリーズ」を主力機として提案しています。なぜ、アルミ加工にこの機械が最適なのでしょうか。

なぜアルミ加工に「30番主軸(SPEEDIO 200Xd1)」が最適なのか?

工作機械には、主軸のサイズ(テーパ)によって40番や50番といった規格がありますが、アルミのような軽金属の切削において、鉄を削るような重厚長大な40番・50番のマシニングセンタは必ずしも必要ありません。むしろ、大きすぎる機械は動きが鈍重になりがちです。

SPEEDIOに代表される「30番マシン」の最大の武器は、圧倒的な「加減速」と「ツール交換速度」です。 アルミ加工、特に複雑形状の部品加工では、ドリルで穴を開け、エンドミルで溝を掘り、タップでネジを切る……といった具合に、頻繁に工具交換と位置決め移動を繰り返します。 SPEEDIO 200Xdシリーズは、この「削っていない時間」を極限まで削ぎ落としています。例えば、ツール交換にかかる時間はわずか数秒です。この数秒の短縮が、月産数千個の量産においては膨大なコストダウン効果を生み出します。

【4台保有】複雑形状の試作から月産数万個まで即応

当社では、このSPEEDIO 200Xdシリーズを4台保有しています。 これにより、1台を試作開発用として稼働させ、加工プログラムと治具の検証が完了次第、他の3台へ即座に横展開して量産体制を構築することが可能です。 「試作はA社、量産はB社」と使い分ける必要がなく、試作で作り込んだ品質データのままスムーズに量産へ移行できるため、立ち上げ期間(リードタイム)を大幅に短縮できます。

【事例紹介】SPEEDIO 200Xdシリーズを活用したアルミ・量産試作

実際に、当社の設備力と技術力を活かして量産化に成功した事例をご紹介します。

複雑形状のバルブボディ(A5052)の工法転換

製品概要: 産業機械用 油圧制御バルブボディ

材質: A5052(アルミ合金)

課題: 多方向からの穴あけが必要な複雑形状で、他社では工程分割によるコスト増や、ハンドリング時の打痕不良が課題となっていました。

SPEEDIO活用による解決: SPEEDIO 200Xdシリーズの高速性を活かし、専用の回転治具と組み合わせることで、多面加工を効率よく集約。ツールチェンジの速さが活きる工程設計を行い、サイクルタイムを従来比で約20%短縮しました。また、試作段階から同機を使用したことで、バリが出にくいパス(刃の軌跡)を確立し、量産時の手仕上げ工数も削減しました。

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アルミ試作・量産のご相談は荻野工業へ

「この図面、もっと安く量産できないか?」「アルミの試作を依頼したいが、将来的な量産まで見てほしい」。 そのようなお悩みをお持ちの設計者様は、ぜひ荻野工業へご相談ください。

  • 設計段階からのVA/VE提案: 図面をいただければ、「ここのRを大きくすればエンドミルの送りを上げられる」「この形状ならSPEEDIOで高速加工が可能」といった、加工屋ならではのコストダウン提案を行います。
  • 量産を見据えた試作対応: SPEEDIO 200Xdシリーズをはじめとする量産設備を使用することで、量産時と同じ精度・品質で試作加工を行います。

アルミ部品のコストダウンと品質安定は、設備選定と技術力で決まります。皆様からのお問い合わせをお待ちしております。